紙幣でもデジタル化社会でも重要な企業; Giesecke+Devrient 社
1) 1852年創業のドイツ企業
2) 世界中145の中央銀行とつながり
3) 毎年 5 億人以上の消費者が G+D 製のクレジットカードを受け取っている
★ひと言★
紙幣用紙のみならず、CBDC、eSIM、コネクテッドモビリティ、デジタルIDなど、これからのデジタル化社会の根幹に位置する企業G+D.
▼Giesecke+Devrient 社とは?
Giesecke+Devrientと書いて、「ギーゼッケ アンド デブリエント」と読み、
略して「G+D」(GアンドD) と呼ばれている1852年創業のドイツ企業。
wikipediaによると、
ユーロ紙幣の印刷を行い欧州中央銀行に供給している欧州有数の紙幣印刷会社。紙幣以外にも様々な有価証券やチケットなどの印刷も行っている。
また、ユーロ紙幣以外にも自国で紙幣を印刷できない発展途上国などに対しても紙幣の印刷を請け負っている。かつて世界一価値の低かったジンバブエドルの印刷も請け負っていた。
ジンバブエドルは、2000年代に激しいハイパーインフレを起こした通貨。
当時「100兆ジンバブエドル」相当の紙幣が発行された。この紙幣を供給していたのが上記のG+D社である。EUや国連による国際制裁と、ドイツ政府による要求により、2008年7月にG+D社取締役会は、ジンバブエ準備銀行への紙幣用紙を即時供給中止することを決定した。
このように紙幣用紙を印刷する企業が紙の供給を止めれば、その国(中央銀行)は紙幣の増刷をできなくなる。これから現金をなくして、デジタル通貨・CBDCに移行していく社会において、「紙幣用紙」がなくなる・供給を止められる、という出来事はどこかの国々で起きうることかもしれない。このような出来事は、「紙幣用紙」だけではなく、「紙幣インク」についても同様のことがいえそうである。
2022年末にCBDC普及に向けて、INXと合弁会社設立を発表したSICPA社は、世界中の紙幣用特殊インクを供給している企業である。
「紙幣用インク」を供給しているSICPA社がCBDC普及に向けた活動を扇動しており、さらに以下に紹介するように「紙幣用紙」を供給しているG+D社もCBDCへの取組みを推進しているのである。
▼G+D社のCBDC取組み
G+D社ホームページには下記のような言葉が掲載されている。紙幣社会での独占的地位から退くことなどなく、G+D社はCBDC社会でも大きな影響力を保っていく。
・「CBDCの実装」; G+D は、CBDC が安全かつ適切に設計および実装されるようにするための包括的なノウハウを提供します。
・「CBDCシミュレーション」; 正確なモデリングは、各国内システムでの支払い手段として CBDC を開始することの意味を理解するのに役立ちます。CBDC シミュレーションを使用すると、既存の決済状況を評価し、CBDC の経済、流動性、および金融安定性への影響をシミュレートできます。
2022年後半にガーナが事実上のデフォルトとなった。
G+D社は2021年にガーナ中央銀行とCBDC "eCedi"開発に関する提携を結んでいる。
-
ガーナ銀行は G+D との間で、国内通貨であるセディのデジタル形式の発行の前段階としてパイロット CBDC プロジェクトを実施する契約を締結。
-
3,000 万人の国民とその政府サービスのデジタル化を含む「デジタル ガーナ アジェンダ」の一部であり、「eCedi」は、物理的な現金を補完し、デジタルの代替手段として機能することを目的とする。
-
また、銀行口座、契約、またはスマートフォンを使用せずに支払いを容易にすることを目的としており、これによりすべての国民の間でデジタル サービスと金融包摂の使用を促進する。
この提携において、G+D社のCBDCソリューションである「Filia」(フィリア)が使われる。
▼G+D社のCBDCソリューション「Filia」
・Filia ®は、スマートフォン、スマートカード、スマートウォッチ、およびその他の形式のデジタルウォレットを通じて利用でき、銀行口座、個人データの開示、または消費者使用料金は必要ありません。
・モバイルネットワークがなくても(オフライン状態でも)、電源やインターネット接続がない地域での支払いに使用できます。
・これにより、中央銀行は、企業と一般市民の両方に広範な利益を保証しながら、独立して使用できるデジタル形式の法定通貨を発行するという使命を果たすことができます。
さらにホームページには、「Filia ®はトークンベースのアプローチに従い〜〜」という言葉もあり、いずれかの分散型台帳技術(ブロックチェーンやハッシュグラフ等)上のネイティブTokenが活用されてFiliaが構築されている可能性がある。だがどのDLT (Token)が活用されているのかは定かではない。だが「ガーナ」や「eCedi」という言葉で検索していくとどのDLTが活用されていそうか予想ができるので別途記事にする予定。
▼紙幣やCBDCだけではないG+D社。eSIM、コネクテッドモビリティ、デジタルIDさえも。
グローバル セキュリティ テクノロジー カンパニーとも呼ばれるG+D社はこれからのデジタル化社会の各方面を抑えている。以下に簡単に紹介する。
[eSIM業界]
世界全体において、GSMA認証を受けたeSIM管理プラットフォームのサプライヤーは15社あります。中でもThalesは2021年第1四半期末のシェアが4割と業界をリードしています。これにGiesecke+Devrient、IDEMIAと続いています。
[コネクテッドモビリティ]
・G+D社の技術を使用したコネクテッドカーには、2枚のeSIMカードが搭載されています。
・1つはテレマティクスサービス(eCall、ナビゲーション、または交通情報サービス)に使用
・もう1つは運転者の個人利用およびエンターテイメントサービスに使用されます。
・G+DのDSDAソリューション(Dual-SIM Dual-Active)とAirOn360(R) eSIM管理プラットフォームを技術基盤とし、BMW iXとBMW i4に搭載されており、将来的にはBMW Groupの新型モデルにも採用される予定です。
・スマートフォン、スマートウォッチ、スマートホームなどのスマートデバイスには、工場出荷時にSIMが搭載されています。
・欧州では2018年3月から自動緊急通報システムeCallの装備が義務化されたこともあり、最近の自動車にもスマートデバイスと同じように組込型SIM(eSIM)が塔載されています。
[ "eSIM管理"]
eSIM管理とは、リモートプロビジョニングと、サブスクリプションのライフサイクル管理を可能にするマネジメントソリューション。
リモートプロビジョニングとは、遠隔からeSIMの活性化を可能とするものである。つまり、該当のeSIMはその持ち主、場合によっては中央機関や第三者により、eSIMをアクティブにしたり、利用不可能にすることが可能なものである。これは利便性をもたらす反面、これまで以上に人間は規律やルールを守り、そこから逸脱する者はeSIMを停止され資本社会を生きづらくなる、そういうことも考えられる。
2017年の記事だが、そのeSIM管理のグローバルリーダーであるG+D社はGoogle Project Fiのパートナーに選定されている。(記事)
[デジタルアイデンティティ"DID"]
セキュリティで保護された個人のアイデンティティは、物理的にもデジタル的にも接続された世界で、何十億もの人々の現代生活の基盤となっています。同時に電子政府のソリューションの重要性が増しています。市民と政府との間のやり取りはますますオンラインで行われています。G+Dは145 年間、革新的な統合 ID ソリューションを作成してきました。
Veridosというのは、 G+D社(60%)と Bundesdruckerei社(40%)の合弁会社。下図の通り、人々の誕生からDNA情報、国民ID、住所、免許証、車両情報、パスポート、国境管理などあらゆる情報がデジタルに紐つけられるサービスを構築している...
▼最後に
今回はG+D社というドイツ企業を取り上げました。紙幣用紙だけではなく、CBDC、eSIM、コネクテッドモビリティ、デジタルIDなどこれからのデジタル化社会の根幹を網羅していることがわかりました。このG+D社の取組みをみても、現金がなくなりデジタル通貨となっていく社会が見えてきたと思います。計画を進める、資本と技術力をもつ層や関連する企業は着実に計画を進めていっており、多くの人々はそれに気づく機会も普段はありません。
今回のニュースレターをきっかけに、デジタル化社会へシフトしていっている今、どのようなリスク分散や投資のチャンスがあるか、考えてみる機会となればと思います。(どのリスク分散、投資がうまくいくかは確証はないが)
過去配信レターもぜひご覧ください。
以上
リスク分散会(https://ris9bun3kai.studio.site/)
すでに登録済みの方は こちら